本「アイヌ文化で読み解く ゴールデンカムイ」

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」

中川裕


カント オㇿワ ヤㇰ サㇰ ノ アランケㇷ゚ シネㇷ゚ カ イサㇺ

(天から役目なしに降ろされた物は

ひとつもない)

アイヌ民族出身の萱野さんが

愛用していた言葉を抜粋。

「アイヌ」とは、人間。

「カムイ」とは、霊魂。

(本作では「神」よりも「環境」を

指す言葉の方がふさわしいと

されている。)

.

アイヌの精神世界「カムイ」は、

動物、植物、火、水などの

自然の他に、

鍋、食器、衣類、電化製品など

人工物も指す。

人間が生きるために何らかの関わりを

持つものには「魂」がある。

という基本的考え。

 .

カムイは…

普段は霊体で「カムイの世界」

にいる。

そして人間と同じ生活を

しているらしい。

人間の世界に来たカムイは

何らかの使命をもっており、

人間の目に見えるよう

火のカムイは、人間に光と熱を。

クマのカムイは、毛皮と肉を。

木のカムイは、樹皮や木材を。

人間にお土産として

持ってきてくれる。

.

人間は、

何もない空間では
生きていけないからだ。

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しかしカムイのお土産を

粗末にすると…

「もうこの家にはお土産をあげない」と判断され、

その土地には動物がいなくなり、

飢饉という災厄が

もたらされるという。

.

人間は…

カムイに感謝を述べ、

お返しとしてお酒やお団子など

人間の手で作らないと存在しない

ものを贈り物として捧げる。

.

カムイもまた、

自分の力で戻ることが

できないからだ。

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人間からの感謝の祈りと贈り物で

カムイの世界へと送り返され、

良い暮らしができる。

と考えられているらしい。

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「カムイの世界」と

「アイヌの世界」。

お互いに必要とする存在なんだと、

興味深い内容だった。

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集英社新書

[2019_vol.04]